あー……あー……聞こえますか?
あー……応答してくれてありがとう。
はじめまして、私はオーストリッチです。
あの……いきなりですが、卵を見かけませんでしたか?
私の卵、見たことがありますよね?……そうじゃないと、あなたにこれが届くはずはないもの。
卵は……あの「バヤナンダモ」に、流れ着いてしまったのかもしれない。
……驚くかもしれないけれど、あなたは特別なのね。
なぜって、私の卵を見たことがあるから。だからあなたが選ばれたの。
……嘘じゃない、本当だって……そんな、疑った眼で見ないで!さあ、バヤナンダモへ一緒に行きましょう!
“フレ フレ Ostrich!! Hayupang Die-Bow-Ken!”
ものがたり
まるで楽園のように緑豊かな地・バヤナンダモ。
バヤナンダモの街を統治するアマットは、不思議な力を持つアンテに子守唄を歌ってもらうことで、人々を導くための夢を見ることができた。しかし、アンテが亡くなり、アマットは眠ることも夢を見ることもできなくなってしまった。すると緑豊かなバヤナンダモの地は、次第に枯れ果て荒地と化していった。
アンテは生前に「ひとつ目のヤギが誕生し、この土地に不幸をもたらすだろう」と予言を残していた。予言を信じたアマットは、妊娠中のヤギを探し出し一匹残らず殺すよう衛兵たちに命じる。アマットたちの手から逃げ回るヤギ飼いのイグメと妊娠中のヤギであるイーナは、偶然にもアンテの葬儀を目撃する。そこでイグメは、アンテの遺体から不思議な力を持つ石を拾いあげる。
ある日、イグメの元に友人でヤギ飼いのニハンが泣きながら駆けつけてくる。ニハンの飼っていたヤギのアリシアが、無残にも殺されたしまったようだ。アマットは殺したヤギの頭数に応じて補償金を支払う制度を発令し、バヤナンダモ中のヤギを虐殺し続けている。イグメとイーナがアマットたちから逃げる中で、イーナは子ヤギを出産する。それはなんと、アンテの予言に登場するひとつ目のヤギ「タルタロス」だった。
無事に出産を終えたイーナだったが、アマットに見つかってしまい、抵抗するイグメの目の前で腹を裂かれて殺されてしまう。家族のように慕っていたイーナの死体を前にし、イグメは絶望の淵で子守唄を歌い出す。すると、アンテの葬儀で拾った石の力が反応し、アマットは眠りに落ちていく。
そのまま、アンテに代る歌い手として、イグメはアマットの家へと連れて行かれる。一方、衛兵から隠れることに疲れたニハンは、ひとつ目のヤギであるタルタロスを生贄に捧げるべく、アマットの家へと向かう。すると再会したイグメとニハンの前で、タルタロスが突然人間の言葉を話し始める。そこで彼らは、これまで誰も気がつかなかったアマットの秘密を知ることになる。
アマットの正体は、人間の皮を被ったひとつ目のヤギだった。イグメは、アマットが寝ている隙にその皮を被り、アマットになりきろうとする。すると衛兵たちは、アマットの皮が剥がれたひとつ目のヤギを、アマットだと気づかずに首を刎ねてしまう。こうして呪いの解けたバヤナンダモの地で、イグメは偽りのアマットとして街を治めていくことになる。
登場人物
イグメ:ヤギ飼いの青年
イーナ:イグメが飼っている白ヤギ
タルタロス:ひとつ目の子ヤギ(イーナの子ども)
ニハン:イグメの友人でヤギ飼い。
アリシア:二ハンが世話をしている雌ヤギ。
アンテ:ヒーラー、予言者(アンテの光る魔法の石は、アンテの葬儀でイグメの手に渡る。石を手にしたイグメは再び歌の能力を取り戻す。)
町の長 アマット:ある秘密を持っているバヤナンダモの町の指導者
町議会の議員:アマットが敷いた条例・命令などを実行する役割を担う
牧場主:イグメと二ハンの雇い主。
兵士:国民たちを導く
アマティスト:バヤナンダモの町民たち(オンラインの観客たち)